自社株の相続税評価額を算出する手法
この記事では、自社株の相続税評価額を算出する4つの手法をご紹介します。
類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、自分の会社と業種が似ている会社をベースに、相続税評価額を算出する手法です。こちらの手法は、従業員が70人以上の事業者のうち、下記の条件を満たす大会社に用いられます。
業種 | 総資産額 | 直近の期末より起算して過去1年間の取引額 |
---|---|---|
卸売業 | 20億円以上(従業員数が35人以下の事業者を除く) | 30億円以上 |
小売・サービス業 | 15億円以上(従業員数が35人以下の事業者を除く) | 20億円以上 |
上記以外 | 15億円以上(従業員数が35人以下の事業者を除く) | 15億円以上 |
参考:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/02.htm#a-178
相続税評価額を算定するやり方
類似業種比準方式では、以下の算式を用いて相続税評価額を求めます。
- 相続税評価額(1株あたり) = 類似会社の株価 × {(a + b + c) ÷ 3} × 0.7
a:自社の1株あたり配当金額 ÷ 類似会社の1株あたり配当金額
b:自社の1株あたり利益 ÷ 類似会社の1株あたり利益
c:自社の1株あたりの簿価純資産 ÷ 類似会社の1株あたり簿価純資産
ちなみに、こちらの手法は後述する中会社または小会社でも利用できます。なお、中会社の場合は0.6、小会社は0.5をかける決まりとなっています。
純資産価額方式
純資産価額方式とは、純資産をベースに自社株の相続税評価額を求める手法です。こちらの手法は、従業員が70人未満の事業者のうち、下記すべての条件に当てはまる小会社に用いられます。
業種 | 総資産額 | 直近の期末より起算して過去1年間の取引額 |
---|---|---|
卸売業 | 7,000万円未満もしくは従業員数5人以下 | 2億円未満 |
小売・サービス業 | 4,000万円未満もしくは従業員数5人以下 | 6,000万円未満 |
上記以外 | 5,000万円未満もしくは従業員数5人以下 | 8,000万円未満 |
相続税評価額を算定するやり方
こちらの手法では、下記の算式で相続税評価額を求めます。
- 1株あたり相続税評価額 = (時価純資産 − 含み益に係る法人税等) ÷ 発行済の株式総数
併用方式
併用方式は、類似業種比準方式と純資産価額方式を同時に用いて、自社株の相続税評価額を求める手法です。こちらの手法は、従業員が70人未満の事業者のうち、下記いずれかの条件に当てはまる中会社に用いられます。
業種 | 総資産額 | 直近の期末より起算して過去1年間の取引額 |
---|---|---|
卸売業 | 7,000万円以上(従業員数が5人以下の会社は除く) | 2億円以上30億円未満 |
小売・サービス業 | 4,000万円以上(従業員数が5人以下の会社は除く) | 6,000万円以上20億円未満 |
上記以外 | 5,000万円以上(従業員数が5人以下の会社は除く) | 6,000万円以上20億円未満 |
相続税評価額を算定するやり方
こちらの手法では、類似業種比準方式で求めた金額と、純資産価額方式で求めた金額を、各々一定の比率で合算します。具体的には、中会社を「大・中・小」という3種類の区分に分け、以下の算式で相続税評価額を求めます。
- 1株あたり相続税評価額 = 類似業種比準価額 × x +1株あたりの純資産価額 ×(1 – x)
xには、区分ごとに下記の数値を使います。
- 大:0.9
- 中:0.75
- 小:0.6
参考:「取引相場のない株式」の評価方法を教えて下さい。 – 中小企業庁
配当還元方式
最後に紹介する配当還元方式は、1年間の配当金額を基準に、自社株の相続税評価額を求める手法です。こちらの手法は、「少数株主グループ」と呼ばれる人たちが用います。具体的には、親族ではない社員が自社株を承継するケースなどで用いられます。
相続税評価額を算定するやり方
配当還元方式では、次の算式を用いて相続税評価額を求めます。
- 1株あたり相続税評価額 = (1株あたり配当金 ÷ 10%) × (1株あたり資本金 ÷ 50円)
ただし、配当を行っていない企業に関しては、1株あたり配当金を2円50銭とします。
まとめ
今回お伝えしたとおり、会社の種類によって用いるべき評価手法は異なります。ご自身での判断が難しいならば、専門家である税理士にご相談するのがオススメです。