介護施設費用を賄いたい。認知症対策の家族信託を用いた解決事例
認知症対策の解決事例
状況
今回、ご相談頂いたAさん(82歳)は、預貯金は400万円ほどでその他にご自宅の土地建物がありました。家族構成は、Aさんとその奥様、そして長男のCさんと長女のDさんです。Aさんは奥様と二人暮らし、長男のCさんは近くに居住しており、よく実家に顔を出していますが、長女のDさんは遠方にお住まいとのことです。ご相談頂いたのは、Aさんとその長男であるCさんからご相談を頂きました。Cさんは、最近、Aさんの物忘れがひどくなってきていることから認知症を心配して相談に来ました。
Aさんは、ご自身と奥様に身体的または認知症などの精神的に問題が生じたときに、子供たちに迷惑をかけたくないので、Aさんと奥様の二人で介護施設などへの入所を希望していました。預貯金はそこまで多くはないため、施設入所する際には不動産を売却して、Aさんと奥様の2人の施設費用に充てたいと考えていました。
認知症などになると不動産売却が難しくなります
重度の認知症になると、不動産売却などの法律行為を行う際に、判断能力に問題があるとして、売却できなくなります。これは、不動産を賃貸したり、不動産の大規模な修繕を行う場合も同じです。Aさんは、精神的・肉体的に問題があった際に不動産を売却したいとお考えです。しかし、重度の認知症などで判断能力を欠いてしまうと不動産を売却し、施設入所費用などに充てられなくなってしまいます。
リーフ司法書士事務所の対応と提案
任意後見での対応を検討
任意後見契約とは、被後見人の判断能力が不十分になったときに、後見人となる人に、被後見人の財産を管理(財産管理)してもらったり、被後見人の代わりに病院への入退院などのお手続(身上監護)を行うものです。今回で言えば被後見人であるAさんが、後見人として長男のCさんと契約することになります。任意後見契約は、Aさんの財産を、Aさんのために使うための契約です。今回のAさんのご相談としては、Aさんと奥様のために財産を使いたいというものです。そのため、任意後見では対応しきれない部分があります。
民事信託での対応をご提案
Aさんのご自宅である土地と建物をAさんのご長男のCさんに信託することをご提案しました。AさんからCさんに信託することで、Cさんに自宅不動産が移転することになり、不動産の管理をCさんが行うことになります。不動産の管理をCさんが行うといっても、CさんはAさんとAさんの奥様のために不動産を管理することになります。これにより、Aさんの財産を売却するよりも賃貸に出す方が、利益になる場合には、賃貸にだすことも可能となりました。もちろん、Cさんの判断だけで不動産を売却したりすることが不安であれば、不動産を売却したり、賃貸する場合にはAさんの同意が必要とし、Aさんが認知症などになっている場合は、長女のDさんの同意が必要とする契約内容にしました。
提案後のお客様の対応
民事信託を行った場合、Aさんは所有権が長男のCさんに移ることに不安を抱えていました。しかし、CさんはAさんのためにしかご自宅を売却したり、運用できない旨を説明したところ、ご納得頂き民事信託を行うことなりました。Aさんのご自宅は世田谷で、駅からも近いことから今後は賃貸に出すことも検討しているとのことです。民事信託にすることで、賃貸運用や売却などの選択をできることになり、Aさんも安心していました。
今回の事例で、任意後見契約により、AさんとCさんが契約した場合、Aさんが認知症になり任意後見契約が発動したときに、家庭裁判所から任意後見監督人が選任されます。その場合、当然ながら任意後見監督人へ支払う費用も発生してしまうのです。もちろん民事信託契約では、身上監護のお手続ができないので、民事信託が全てに対応できるわけではありません。お客様の事情次第で、適した法的解決手段は異なります。是非一度お問い合わせください。