【土地や家を残せる代償分割】川崎市登戸の司法書士が不動産の相続を解説
こちらでは、遺産分割方法である代償分割について解説していきます。具体的には次の3点です。
- 代償分割って何?
- 代償分割の長所と短所
- 代償分割を行う際の一般的注意点と専門的な注意点
代償分割とは?
代償分割とは、次のとおりです。
- 特定の相続人が不動産を相続します。
- 不動産を相続した人が他の相続人に、代わりとなる金銭(代償金)を支払います。
この方法を代償分割といいます。相続財産のほとんどが土地や家などの不動産で、相続人間で分けることが難しいときに使われます。
代償分割の長所と短所
代償分割の長所
売りたくない土地や家を残すことができること
代償分割の長所は、不動産を残すことができる点です。
別の遺産分割方法として、換価分割という方法があります。換価分割は、土地や建物などの分けることが難しい不動産を売却し、その利益を相続人間で分ける方法です。もちろん、残したい不動産を残すことができません。
そのため、生まれ育った実家など、残したい不動産があるときは、代償分割がよく使われます。
代償分割の短所
代償分割には、次の2つの短所があります。
- 不動産の評価方法で争いになる可能性がある
- 不動産を取得する人に現金が必要
不動産の評価方法で争いになる可能性がある
不動産の評価方法は大きく4種類あります。不動産評価額を基準に、代償金の金額を決めます。
不動産を取得する相続人は、不動産を低く評価してもらい、代償金の額を下げたいと考えます。しかし、代償金を受け取る相続人は、少しでも高く評価し、代償金を多くもらいたいと考えます。
その結果、相続人同士でのトラブルになる場合があります。
代償金の金額や支払い方法については、代償分割の代償金額や支払方法の定め方で解説しております。
不動産を取得する人に現金が必要
代償分割を行う場合、不動産を取得する相続人が多額の現金を持っておく必要があります。他の相続人に支払う代償金がなければ、代償分割は使うことはできません。
代償金の支払方法は、分割で支払うこともできます。詳しくは、代償分割の代償金額や支払方法の定め方をご覧ください。
代償分割を行う際の基本的な注意点と専門的な注意点
基本的な注意点
代償分割を行う場合に、基本的には次の2つの点に注意をする必要があります。
- 多額の贈与税が発生する可能性がある
- 代償金を支払う側の負担が大きい
多額の贈与税が発生する可能性がある
遺産分割協議書に「代償分割を行う」ことを記載する必要があります。
記載がない場合、代償金が贈与であると判断され、多額の贈与税が発生してしまう可能性があります。
代償金を支払う側の負担が大きい
代償金を支払う相続人はやはり負担が大きいです。
例えば、相続税が発生する場合、代償分割により代償金を受け取る相続人は、代償金から相続税などを支払うことができます。しかし、代償金を支払う相続人は、手元に現金がなければ、相続税を支払えません。さらに代償金の出費もあり、多額の現金が必要となってしまいます。
相続税が発生してしまう場合は、代償分割を行うかどうか慎重に検討する必要があります。
専門的な注意点
代償分割を行うときの専門的な注意点は次の2つです。
- 相続不動産に住宅ローンが残っていると、不動産を取得していない相続人へ支払い請求される可能性がある
- 不動産を売却するときに、代償金を取得費として計上できない
相続不動産に住宅ローンが残っているとき
代償分割により相続する不動産に住宅ローンが残っている場合、残債も基本的には不動産を取得する人が負担することになります。
しかし、住宅ローンの銀行などの債権者は、原則として、相続人の法定相続分に従って請求ができます。債権者は、不動産を取得していない相続人にも、残った住宅ローンの一部を請求できるのです。
もちろん、住宅ローンの債務を負担する人が不動産を取得する相続人になっていれば、不動産を取得しない相続人が支払った分は、不動産を取得する相続人へ請求することができます。
不動産を取得した相続人が不動産を売却するときの注意点
不動産を取得した相続人が、後で取得した不動産を売却するとき、支払った代償金を取得費として計上できません。
不動産を売却したときに得られた利益に対して、譲渡所得税が課税されます。この譲渡所得税は売却した金額から、不動産の取得費を差し引いて計算されます。
この取得費に、支払った代償金は計上できないのです。
まとめ
今回は次の3つについて解説しました。
- 代償分割って何?
- 代償分割の長所と短所
- 代償分割を行う際の一般的注意点と専門的な注意点
この3つの解説をまとめると次のようになります。
代償分割って何? | 特定の相続人が不動産を相続し、不動産を取得した相続人が他の相続人に代償金を支払う分割方法 |
代償分割の長所 | 売りたくない土地や家を残すことができること |
代償分割の短所 | ・不動産の評価方法で争いになる可能性がある ・不動産を取得する人に現金が必要 |
代償分割を行うときの基本的な注意点 | ・多額の贈与税が発生する可能性がある ・代償金を支払う側の負担が大きい |
専門的な注意点 | ・相続不動産に住宅ローンが残っていると、不動産を取得していない相続人へ支払い請求される可能性がある ・不動産を売却するときに、代償金を取得費として計上できない |
代償分割は、手放したくない不動産を残すことができる方法の一つです。
しかし、遺産分割協議書の記載を誤ると、多額の贈与税が課税されてしまいます。また、不動産の評価額をめぐって相続人の間でトラブルに発展する恐れもあります。
代償分割は一長一短の手法ですので、代償分割を行う場合には専門家へご相談することをおすすめします。