【家族信託:受託者の業務と注意義務】を司法書士が解説!
家族信託の受託者になったときにどのような業務をするのでしょうか?
こちらでは受託者の業務について次の2つに分けて解説していきます。
- 受託者が行う信託の業務(信託事務処理義務)
- 受託者の業務は仕事と同等の注意義務がある!
受託者が行う信託の業務(信託事務処理義務)
受託者は家族信託によって、信託の事務を処理しなければいけない義務を負います。
この信託の事務とは、どのようなことをしなければいけないのでしょうか?
結論:信託契約の内容により異なります
受託者は信託契約の目的達成のために必要行為をします。そのため、信託契約の目的によって、業務が異なるのです。
例えば、信託の目的が、「先祖代々の実家を大切に維持管理すること」の場合と「委託者が認知症になった時に施設費用に充てるために実家を売却できるようにすること」では、次のように業務が異なります。
「先祖代々の実家を大切に維持管理すること」 | 実家の売却は業務に含まれない |
委託者が認知症になった時に施設費用に充てるために実家を売却できるようにすること」 | 不動産の売却が含まれる |
信託契約書に記載されている業務だけ行っていればいいのは?
そんなことはありません。法律では、「受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。」と規定しています。
この信託の本旨に従った業務は、信託契約に記載されたことだけでなく、信託契約書を作った委託者の意図や一般的な常識から導かれる業務も含みまれるのです。
よって、信託契約書に記載されている業務だけ行っていれば良い、というわけではないのです。
受託者の注意義務はどのくらい?善管注意義務
受託者は信託の事務処理を行うときには、どのくらいの注意義務を負うのでしょうか?
原則、会社の仕事を行うのと同じくらいの注意義務を負う
注意義務には、大きく善管注意義務と自己のものと同一の注意義務があります。
善管注意義務は、簡単にいえば、会社で仕事をしているときに負っている注意義務です。
自己のものと同一の注意義務は、自身のことを行う上での注意義務をいいます。
家族信託は身内とは言え、しっかりとした注意義務を負う!
家族信託は、家族や身内で行うことが多いです。
しかし、原則として受託者が負う注意義務は善管注意義務という重い注意義務を負います。
「家族だから」、「身内のものだから」という甘えで善管注意義務を怠りトラブルにならないように注意する必要があります。
まとめ
まとめると次のとおりです。
- 受託者が行う信託の業務(信託事務処理義務)→信託契約の目的や内容により異なる!
- 受託者の業務は仕事と同等の注意義務がある!→家族のものだが、会社レベルの重い注意義務がある!
分からなければ、専門家へ確認しましょう!
受託者が行う業務は信託契約内容により異なります。そのため、実際に何をすればいいかわからないときは、契約書の作成を依頼した専門家へ確認することをおすすめします。