【家族信託と競合行為】受託者は受益者の利益を優先!川崎市登戸の司法書士が解説

受託者は、信託事務を行う範囲内で競合行為を制限されます。

こちらでは、受託者の競合行為の制限について次の3つに分けて解説していきます。

  1. 受託者の競合行為の制限
  2. 【例外】競合行為であっても認められる場合
  3. 競合行為をされたときの対応!介入権の行使

    家族信託契約後の受託者の競合行為の制限

    受託者は、家族信託の事務としてでなく、受託者自身のための行為も、信託事務と競合する範囲内で制限されます。

    これは、受託者が信託の事務をするときは、忠実に信託事務を行う義務があるからです。

    受託者が、信託事務と競合する自身のための行為をすることは、忠実に信託業務を行う妨げになる可能性があり、制限されるのです。

    そもそも競合行為って何?

    競合行為は、会社などでよく使われます。

    会社の役員などが、自分や第三者のために、会社の事業の部類にある取引や行為などをすることを禁止するものです。

    例えば、ラーメン屋を行っている株式会社二欄の取締役の一人が、会社とは別で個人でラーメン屋を行うことは競合行為になってしまいます。

    受託者の競合行為の制限は、信託事務の範囲に限定!

    信託における受託者は、自分や自分の利害関係人のために、信託事務処理と競合することをしてはいけません。

    この受託者の行為の制限は、信託事務処理と競合する範囲に限定されています。

    具体例

    信託の目的が、「利益率の高い賃貸用不動産の購入」だったときに、受託者が良い物件を見つけたとします。

    しかし、受託者自身も、利益率の高い賃貸用不動産を探していて、その不動産を信託のためではなく、自身のために購入した場合、競合行為に当たります。

    【例外】受託者の競合行為であっても認められる場合

    次の場合には、信託事務処理と、受託者や受託者の利害関係人のための行為が競合していても、することができます。

    ① 「契約書で許容する定め」がある場合
    ② 競合行為について、受託者が「重要な事実を開示」し、「受益者の承認」を得たとき

    もし、競合行為をしてしまったら、

    受託者が競合行為をしたら、原則として受益者に重要な事実を通知する義務があります。

    これは、競合行為の例外に当てはまる場合も通知する義務があるのです。

    受託者が、通知を怠ると、100万円以下の過料の対象となる可能性があります。

    ただし、信託契約で通知自体を不要と定めることも可能です。

    競合行為をされたときの対応!介入権の行使など

    受託者に競合行為をされたとき、受益者も対応策としては次の方法があります。

    1. 介入権の行使
    2. 損失てん補責任と受託者の解任請求

     

    1.介入権の行使【受益者の介入権】

    介入権とは、受託者が行った信託業務と競合する受託者自身のための行為を「信託事務の行為」とすることができる受益者の権利です。

    受益者が介入権を行使することで、受託者自身のための行為を、受益者や信託財産のために行った行為とみなすことができます。

    先程の事例を使って介入権を確認!

    信託の目的が利益率の高い賃貸用不動産の購入であり、受託者が良い物件を見つけた、という事例を使って確認しましょう。

    受託者が、この良い物件を自身のために購入したときに、受益者は介入権を行使することで、この良い物件を信託財産のために購入したものとすることができるのです。

    介入権が使える期間

    受益者が介入権を行使できる期間は、受託者の競合行為の時から1年を経過するまでです。

    1年を経過すると消滅してしまうので、注意が必要です。

    介入権は第三者の権利を害することはできません

    介入権の行使により、第三者の権利を侵害ないのです。

    例えば、受託者が自身の利益のために不動産を買うことが、競合行為に該当し、受託者が買った不動産を第三者へ不動産を売却していた場合です。

    受益者が介入権を行使して、「介入権を行使したから、不動産の売却は無効だ!」とは言えないのです。

    2.損失てん補責任と受託者への解任請求

    受益者が介入権を行使できなかったときは、受託者に対して責任追及をすることができます。

    責任追及の方法は次の2つです。

    • 損失のてん補責任
    • 受託者への解任請求

    損失のてん補責任

    受託者の競合行為により、損失が出た場合は、その損失を補てんするよう請求することができます。

    損失てん補責任をすると、受託者が競合行為により得た利益が、信託財産の損失額と推定されます。

    受託者への解任請求

    競合行為の制限に違反することは、受託者の解任事由に当てはまります。

    よって、受益者は受託者を解任することができます。

    まとめ

    こちらで解説した内容は次の3つです。

    1. 受託者の競合行為の制限とは?
    2. 【例外】競合行為であっても認められる場合
    3. 競合行為をされたときの対応!介入権の行使など

      まとめると次のとおりです。

      受託者が、競合行為として制限を受ける行為信託の事務内容により異なる
      競合行為の例外は2つ①契約書で許容する定めがある
      ②受託者の重要な事実の開示+受益者の承認
      競合行為をされたときの対応は3つ①介入権の行使
      ②損失てん補責任と受託者の解任請求

      受託者には多くの義務がある

      受託者には、今回紹介した競合行為の制限以外にも様々な法律上の義務が生じます。家族信託をするときは、受託者の義務をしっかりと理解することをおすすめします。

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