【家族信託:受託者の義務】財産の管理方法である分別管理義務を司法書士が解説!
信託により、受託者は自分自身の財産とは別に、信託された財産を管理することになります。
そのため、自身の財産と信託された財産が混ざらないように、分けて管理する必要があるのです。
これを分別管理義務といいます。
受託者の分別管理義務について解説!
分けて管理する義務があるとはいえ、実際にどう管理すれば良いのか、わからない。
そんな方のために、こちらではこの分別管理義務を信託財産ごとに解説していきます。
- 信託した不動産の分別管理の方法
- 信託した金銭の分別管理の方法
- 信託した証券の分別管理の方法
信託した不動産の分別管理の方法
信託された不動産の所有権は、受託者に移ります。そのため、不動産も受託者名義に登記する必要があります。
受託者個人の登記と信託された不動産の違いは何?
受託者個人の不動産と信託された不動産は、どちらも登記されます。
この2つの違いは、信託目録があるかないか、で異なります。
信託された不動産には、信託目録が付けられるため、信託財産であることがわかります。
そもそも登記する必要ってあるの?
信託法では、分別管理義務の方法について、登記できる財産については登記をしてください、という規定があります。
よって、登記は必要です。
そのため、登記されていない建物を信託するときは、登記する必要があります。
信託した金銭の分別管理の方法
信託された金銭も、受託者個人のお金とは分けて管理する必要があります。
信託口口座で管理することがおススメ!
信託された金銭は、受託者個人の財産とは分けて管理するために、金融機関で信託口口座というものを作成する必要があります。
信託口口座は、通常の普通預金とは異なり、口座の名義が次のようになります。
- 委託者▲▲受託者○○
- 受託者○○信託口
託者個人の口座で分けて管理すれば良いのでは?
受託者個人の口座で信託された金銭を管理することは可能です。しかし、次のようなデメリットがあります。
- 受託者死亡時に受託者の相続財産として相続手続が必要になる。
- 受託者個人の債権者から、差押えられるリスクが高い。
受託者死亡時に受託者の相続財産として相続手続が必要
受託者個人の口座であるため、通常の相続手続を行う必要があります。
通常の相続手続の後に、受託者の相続人から次の受託者へ渡す方法によるため、手続が煩雑になりやすいです。
受託者個人の債権者から、差押えられるリスク
通帳の名義が受託者個人であることから、受託者個人の債権者が信託財産とは知らずに差押えてしまう可能性があります。
信託した証券の分別管理の方法
信託された証券の分別管理の方法は、株式が上場株式なのか、非上場株式なのかで異なります。
上場株式が信託財産
上場株式は、一般的に、証券会社で管理されている場合が多いです。そして、証券会社で管理された株式は、証券会社の口座と紐づけられています。
そのため、上場株式を信託するときは、証券会社の信託口口座を作成しないと株式を口座と紐づけることができないのです。
よって、証券会社で口座を作成した上で、株式の移管手続を行う必要があります。
非上場株式が信託財産
非上場株式は、基本的に、対象の会社の株主名簿によって管理されています。
また、株式に譲渡制限が付されているため、会社の譲渡承認手続が必要となります。
分別管理義務をしなかった場合
分別管理義務をしなかったことで、信託財産に損失が生じた場合には、受託者はその損失を補てんする必要があります。
そのため、受託者個人の財産と信託財産とは分けて管理しましょう。
まとめ
今回は、不動産ごとの分別管理の方法について解説しました。
まとめると次のとおりです。
信託された財産の種類 | 分別管理方法など |
---|---|
不動産 | 信託登記手続で分別管理する。 |
金銭 | 信託口口座で管理する方法がおすすめ。信託専用の口座だと、相続や差押えされるデメリットがある。 |
証券 | ・上場株式 =証券会社の信託口口座を作成する必要がある ・非上場株式=会社に報告し、譲渡承認手続をする必要がある。 |
以上となります。信託の管理方法は信託財産の種類によって異なります。
管理方法がわからない場合は、司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。