任意後見契約の予備的後見人|認知症対策
任意後見契約における予備的任意後見人
ご自身が認知症などになった場合に、本人の代わりに財産管理や契約を行ってくれる人とご自身が認知症などになる前に、事前に契約しておくことを任意後見契約といいます。
この任意後見契約は、本人が認知症などになったときに、任意後見受任者などが家庭裁判所へ任意後見監督人の選任請求をし、家庭裁判所が任意後見監督人の選任をした時に効力が生じます。
しかし、任意後見人または任意後見受任者が不慮の事故などで後見業務をできなくなったり、亡くなってしまった場合に、代わりに任意後見人になってくれる人を選任できるのでしょうか?
今回の記事では任意後見人が職務を行えなくなることに備えて予備的任意後見人を選択できるのか?について解説しております。
そもそも任意後見人は誰でもなれるのでしょうか?
任意後見人の資格は法律上制限はないので、次の受任者の不適任事由に該当しない限り、本人の親族もなることができます。
任意後見受任者の不適格事由
未成年者 |
家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人または補助人 |
破産者 |
行方の知れない者 |
本人に対して訴訟をし、または、した者並びにその配偶者及び直系血族 |
不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者 |
法人も任意後見人になることはできます
任意後見契約は、委任契約の一種であるため、法人を任意後見受任者とすることもできます。法人を任意後見受任者にするメリットは、個人だと死亡などで任意後見契約が終了してしまうことを回避することができる点です。
しかし、法人に不正な行為その他不適任な事由があったときは、任意後見監督人選任審判の段階で、選任の申立が却下され、任意後見契約の効力が発動しないというおそれがあります。
予備的任意後見人を定め
例えば、任意後見契約の受任者の1人が死亡したとしても、他の人を受任者とする予備的受任者の定めをすることはできるのでしょうか?
結論:予備的受任者を定めることはできません
任意後見契約を行った場合、その内容は登記されます。この登記法上、予備的受任者の定めを登記事項とする明文の規定がないため、予備的受任者の定めを設けることはできないと解されています。
よって、任意後見契約後、受任者が死亡してしまった場合には、再度別の人と任意後見契約を締結するか、本人が既に判断能力を欠いている場合には、法定後見の申立を行うことになります。
現在の対応方法
2通の任意後見契約公正証書の作成
対応方法としては、2つの任意後見契約を作成する方法です。
1人の受任者が死亡し、1つ目の任意後見契約が効力を発動しなくなったとしても、もう1人の受任者が任意後見人に就任できるように2つ目の任意後見契約が残るようにしておく方法です。
事例を通して確認しましょう
Aさんは自身が認知症などになったときに備えて、いつも近所で面倒を看てくれているXさん夫婦(夫Xさん、妻Yさん)に財産管理などをお願いしたいと考えていました。
このような場合に、AさんがXさんの予備的受任者としてYさんを希望される場合には、任意後見契約で二人の順位を同順位とし、単独で権限を行使できるようにします。
そして予備的受任者であるYさんの任意後見契約書内に特約を設け、Yは、Xの職務遂行が不可能又は困難になった時に、任意後見監督人の選任請求を裁判所にするものと定めることになります。
現在の対応方法のデメリット
この予備的受任者の代替手段のデメリットは、次の2つがあります。
金額が高額になる |
特約を設けても家庭裁判所を拘束しない |
金額が高額になる
任意後見契約書を2通作成することになるので、公証役場への費用が実質的に2倍になってしまいます。
特約を設けても家庭裁判所を拘束しない
Xの職務遂行が不可能又は困難になった時に、Yが任意後見監督人の選任請求を裁判所にするとした特約は、家庭裁判所を拘束しません。
例えば、先程の事例で、Yさんが特約に違反して、Xさんが職務を行っているにもかかわらず、任意後見監督人の選任請求をしたとします。
そうすると家庭裁判所はこの特約に拘束されませんので、任意後見監督人の選任を認め、XさんとYさんが同時に任意後見人に選任されることもあるのです。
まとめ
今回は、任意後見契約における予備的任意後見受任者について解説しました。どのような任意後見契約にするのかはお客様の状況に応じて異なります。
任意後見契約をご検討中の方は、後見業務を行っている司法書士へ相談することをおすすめします。