【家族(民事)信託】受託者と任意後見人は兼任できる?川崎市登戸の司法書士が解説!
家族信託の受託者と受益者の後見人は兼任できるのでしょうか?
結論からいえば、兼任は原則としてできません。しかし、契約書の定め方次第で兼任できます。
こちらでは、次の2つについて解説していきます。
- 家族信託と任意後見契約の併用の意義
- 併用した場合に兼任ができるのか?
家族信託と任意後見契約の併用の意義
制度の組み合わせが大切
家族信託も任意後見も、それぞれの制度だけでは解決できない問題があります。そのため、家族信託と任意後見契約を併用することで、様々な問題に対応することができます。
ここでは、それぞれの制度の限界について紹介します。
家族信託と任意後見、それぞれの制度で対応できないこと
任意後見にできて、家族信託に対応できないこと
家族信託は、認知症対策や相続対策として使うことはできます。家族信託について詳しく知りたい方は、家族信託って何?をご確認ください。
任意後見にできて、家族信託にできないことは次のとおりです。
- 家族信託では全ての財産を管理できない(例:年金など)。
- 後見契約と異なり本人の代わりに遺産分割協議に参加したり、入退院の手続を行うことはできない。
家族信託にできて、任意後見契約で対応できないこと
任意後見契約は、本人の代わりに契約したり、財産管理するものです。
家族信託にできて、任意後見にできないことは次のとおりです。
- 本人が亡くなった後の財産の帰属先を決められない。
- 基本的に、被後見人の財産を本人以外の人のために使用することはできない。
- 財産の積極的な運用ができない。
任意後見人と家族信託の受託者は兼任できるのでしょうか?
家族信託と任意後見契約の併用はとても有用な方法です。しかし、併用する場合には、役割を担える人が一定数必要です。
原則として、受益者の任意後見人は受託者を兼任することはできません。
受益者の任意後見人は、原則として、受託者になることはできません。
受益者の権利には、受託者の業務を監視・監督する権利が含まれています。受益者の任意後見人は、受益者の代わりに受託者を監視・監督します。
受託者と受益者の任意後見人が同一人物だと、自分で自分を監視監督することになってしまうのです。
信託契約の定め方次第で、受託者を兼任できるようにすることも可能
受託者を監督する人として、受益者代理人を指定しておけば兼任することは可能となります。
受益者代理人がいる場合には、受益者の監視・監督権は受益者代理人に移ります。そのため、受託者が自分で自分を監督するという状況を避けることができます。
実際の事例を見てみましょう!
状況
Aさん(82歳)には、障害を抱えた長女のCさん(61歳)がいます。
Aさんの財産は自宅不動産と収益物件です。
最近もの忘れが激しくなり、自身に何かある前に長女のCさんのために対策をしておきたいと考えています。
Aさんの今後の希望
Aさんには、これまで色々と面倒を看てもらっている甥のYさんがいます。自分に何かあったときは、YさんにCさんの面倒を見てもらいたいと考えています。
Aさんの希望は次のとおりです。
Aさんが亡くなった後 | 自宅と収益不動産は、Cさんのために使ってもらいたい。 |
Cさんが亡くなった後 | Aさんの自宅不動産と収益不動産はYさんに渡したい |
家族信託と任意後見契約を使った対応
信託契約を締結しすることで、自宅不動産と収益不動産をAさん→Cさん→甥のYさんへ移すことができます。
また、任意後見契約をすることで、Aさんが認知症になった後の、年金の管理とAさんの病院への入退院手続を行うことができます。
この事例で受託者とAさんの後見人をYさんにした場合、受益者代理人として専門家を定めておく必要があるでしょう。
まとめ
家族信託の受託者と受益者の任意後見人の兼任の可否については、次のとおりです。
原則 | 受益者の任意後見人は、受託者を兼任できません。 |
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例外 | 受益者代理人を使うなど、信託契約の内容次第で兼任を可能 |
家族信託はとても複雑です。司法書士であれば、家族信託に精通しているとは限りません。
よって、家族信託を依頼する場合には、複数の専門家へ問い合わせ、セカンドオピニオンを得ることも有用でしょう。