相続対策として家族信託をする場合、法人は受託者になれるの?

受託者とは?

受託者とは、委託者から財産を預かり、受益者のために信託の目的にしたがって財産を管理・処分する者です。受託者は、信託された財産の所有権を取得することになり、信託の目的などの契約による制約の範囲内で、自由に使用収益し、または処分することができます。しかし、信託財産を自由に使用収益したり、処分したりした収益は、受益者に帰属することになります。

受託者になれる人

信託を設定した場合、信託された財産を管理するのは受託者となります。信託とは字のとおり、信じて託すものです。そのため、財産を管理する受託者は、委託者と受益者からの信頼に応えられる能力を有するものである必要があります。そのため、受託者には、一定の判断能力が要求されています。

法律は、「信託は、未成年者又は成年被後見人若しくは被保佐人を受託者とすることはできない」と規定しています。

信託業法の規制

このように法律は、家族信託の受託者になるには、一定の行為能力が必要としています。また、この規制以外にも、信託業法による規制があります。

信託業とは、信託の引き受けを行う営業をいいます。信託業法では、信託の引き受けを業として行う者は、免許を受けた信託会社でなければならない、としているため、弁護士や司法書士が受託者となることはできないと考えられます。

法人は受託者になれるのか?

受託者として一般社団法人などを設立し、その一般社団法人を受託者とすることは、可能と考えられます。しかし、設立した法人が信託業法に抵触しないように注意する必要があります。そのためには、法人の目的をどのように定めるのか、を工夫する必要があります。信託業法の定めるように、信託の引き受けを営業として行うことはできません。

営業とは、営利の目的で同種の行為を反復継続することと解されます。よって、設立する法人についても、信託の受託による営利を目的とせず特定された家族信託の受託のみを目と定めれば、受託者になることは可能と考えられます。

一般社団法人の社員構成

一般社団法人の社員の構成にも注意が必要です。その一般社団法人の社員が受益者である場合には、信託の終了事由である「受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき」に該当する可能性があるためです。また、委託者を唯一の社員とした場合でも、自己信託とされるおそれがあります。

家族信託契約は長期に及ぶ場合が多いです。そのため、信託開始時に問題ないとされた社員構成でも、受益者の変更に伴って、潜在的な問題が顕在化することもあります。これにより、法人の意思決定機関が機能せず、信託事務処理に支障が出る可能性があるのです。

まとめ

今回は、受託者の説明から、受託者として法人を設立し、受託者にすることができるのか、について解説しました。家族信託については、まだまだ歴史も浅く、判例も多くありません。信託の受託者を法人とする場合にも、様々な角度から法的に問題ないか検討する必要があるでしょう。

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