【家族信託】受託者の利益相反行為って何?|川崎市登戸の司法書士が解説!

受託者は家族信託により、忠実義務を負います。利益相反行為はこの忠実義務違反の1つです。

こちらでは、次のことを説明します。

  • そもそも利益相反行為って何?
  • 家族信託で禁止される利益相反行為
  • 利益相反行為をしたらどうなる?
  • 利益相反行為をしたとしても、禁止されない例外

そもそも利益相反行為って何?

利益相反行為とは、「一方が増えれば、他方が減る。」という関係になるものです。

例えば、贈与でいうと、一方がお金を渡せば、受け取る側はお金が増え、渡す側はお金が減ります。

よって贈与は利益相反になると考えます。

家族信託で禁止される利益相反行為

家族信託では、次の4つが禁止されています。

自己取引受託者の財産を、信託財産にすること
信託財産を、受託者の財産とすること
信託間取引信託財産を他の信託財産に帰属させること
代理人・受託者取引受託者が第三者の代理人となって、第三者と信託財産のためにする行為をすること
間接取引受託者個人の債務を担保するために、第三者と信託財産に担保を設定すること
その他に、第三者との間で信託財産に関する行為であって、受託者か受託者の利害関係人と受益者の利益が相反することになるもの

具体例で確認!

先程の表を具体例を通して、確認していきましょう!

種類具体例
自己取引受託者の預貯金を信託財産へ贈与すること
信託間取引2つの家族信託の受託者になっているときに、一方の信託の信託財産である土地を他方の信託の信託財産にすること
代理人・受託者取引第三者が、信託財産に含まれる不動産を買いたい場合に、受託者が家族信託の受託者としての立場と第三者の代理人としての立場で売買する場合
間接取引・受託者の銀行からの借金について、信託財産である不動産に抵当権をつけること
・受託者の子供が信託財産に含まれる不動産を買うこと

利益相反行為をしたらどうなる?

利益相反行為をすると、利益相反行為の分類に応じて、効果が異なります。

原則として、次のとおりになります。

自己取引無効
(受益者が追認すると遡って有効になる)
信託間取引無効
(受益者が追認すると遡って有効になる)
代理人・受託者取引受託者が代理人となっている第三者が、利益相反行為であることについて、
知っている       =第三者との取引を取消しできる
知らないが、重過失がある=第三者との取引を取消しできる
上の2つ以外      =受託者に損失を補てんするよう請求できる
間接取引受託者が代理人となっている第三者が、利益相反行為であることについて、
知っている       =第三者との取引を取消しできる
知らないが、重過失がある=第三者との取引を取消しできる
上の2つ以外      =受託者に損失を補てんするよう請求できる

第三者の保護と受益者の取消権

受益者は、取消権を有しています。

取消権は、信託財産を第三者へ移す利益相反行為を取消すことができます。

間接取引や代理人・受託者取引で信託財産が第三者へ移った場合は?

間接取引や代理人・受託者取引により、信託財産が第三者へ移った場合、受益者の取消権の対象になります。

しかし、第三者の状態により、受益者が取消しできるかが異なります。

第三者が、受託者の行為が利益相反行為であることを知っていた受託者の利益相反行為を取消せる
第三者が、受託者の行為が利益相反行為であることを知らなかったけど、重い過失がある受託者の利益相反行為を取消せる
上の2つ以外取消すことはできません

自己取引や信託間取引で移った財産が、その後第三者へ移転したときも無効?

信託財産→受託者個人の財産→第三者へと移転したとき、第三者への移転を取消すことができます。

ただし、第三者が利益相反行為であることを「知っていた」、「知らないけど、重い過失がある」ときのみ、取消しが可能です。

逆に、第三者に過失がなく、また利益相反行為であることを知らなかったときは、取消しできません。

例えば、次のように財産が移転した場合、受益者は取消権を使うことはできません。

受益者の取消権行使の具体例

利益相反行為をしたとしても、禁止されない例外

利益相反行為をしたとしても、次の例外に当てはまる場合は禁止されてません。

信託契約で利益相反行為を許容する定めがあるとき
相続などで、信託財産が固有財産へ移った場合
重要な事実を開示した上で、受益者の承認を得たとき
・信託の目的を達成するための合理的な必要性+受益者を害さないことが明らか
・利益相反行為をする際に、様々な事情を総合的に考慮して、正当な理由があるとき

この例外以外にも、受益者が、自己取引や信託間取引で無効になった行為を追認することで、行為の時にさかのぼって有効にできます。

ただし、例外に当てはまる場合でも、受託者が利益相反行為をするときは、原則として、受益者にその行為の重要な事実を通知しなければいけません。

まとめ

まとめると次のとおりです。

  1. 利益相反行為は4種類ある!
  2. 利益相反行為の種類によって無効になったり、受益者により取消ができる。
  3. 利益相反行為をしても例外に該当すれば、認められる。しかし、利益相反行為をしたときは重要な事実を通知しなければならない。

利益相反行為に当てはまらなくても、、

利益相反行為に当てはまらなかったとしても、善管注意義務や忠実義務に違反すれば、損害の賠償をしなければなりません。

そのため、信託財産に何かをするときに、不安があるのであれば、事前に専門家へ相談することをおすすめします。

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