【信託財産と追加信託】どんな財産を信託できるの?家族信託を登戸の司法書士が解説!
信託財産と追加信託
信託契約をする場合に、委託者から受託者へ信託する財産を、信託財産といいます。ここでは、次の2つについて解説していきます。
- 信託財産
- 追加信託
信託財産
信託財産とは、受託者が信託契約の範囲内で管理又は処分する一切の財産をいいます。
信託財産にできる財産とは?
信託財産は、プラスの財産で移転または分離可能なもの
信託財産は、受託者により管理・処分されます。そのため、信託財産は管理・処分できるプラスの財産である必要があります。
そして、信託により財産の所有権を移転することから、移転可能な財産である必要があるのです。
信託できない財産とは?
信託できない財産は先程説明したとおり、マイナスの財産である債務は信託できません。それ以外にも次の財産は信託できません。
- 年金
- 預金
- 農地
年金
年金を受給する権利は、その人だけしか持つことができない権利(一身専属権)であるため、信託できません。年金と同様に一身専属権は信託できません。
もちろん、振り込まれた年金を引き出し、現金化すれば信託できます。
預金
預金は、金融機関との契約により、預金自体を誰かに渡すことに制限があります。この制限により預金を信託できないのです。
なお、預金は信託できませんが、引き出して現金にすれば信託可能となります。
農地
農地は、農地法という法律で定められているので、農地法に従う必要があります。農地法では、農業協同組合などが受託者となる場合を除いて信託できないのです。
農地になっている土地を信託するには、宅地などに地目変更する必要があります。
まとめると次の図のとおりです
追加信託
追加信託とは、信託契約をした後に、信託に後から財産を加えることです。信託財産に追加で財産を加えることから追加信託といいます。
次の図をご覧ください。
①でAさんとBさんが信託契約をしています。AさんはBさんに財産を預け、BさんはAさんのために財産を管理するとしています。
その後、②でAさんが信託財産に追加信託しています。
追加信託で契約の変更が必要になることも
追加信託の性質は、最初の信託契約の内容と追加信託する財産の内容で個別的に判断する必要があります。
例えば、家族信託契約の内容が、貸している不動産の管理に関するものだったとします。
賃貸管理に必要となるお金が不足しているときに、金銭を追加信託することは単なる信託財産の増加です。しかし、委託者の自宅を追加する場合には、信託契約次第で信託契約の変更または新規信託設定+信託の併合と考えられます。
追加信託は誰ができるの?
契約内容次第で追加信託は誰でもできますが、注意が必要です
追加信託は、委託者、受益者、第三者からの追加信託も行うことができます。しかし、追加信託するには次の2つに注意する必要があります。
- 受託者の管理する信託財産が増えるため、受託者の責任も増える
- 追加信託を行う者が第三者である場合には、贈与税が発生する可能性がある
自己信託の追加信託の注意点
自己信託
自己信託とは、財産を預ける人(委託者)と財産を管理する人(受託者)が同一人で、特定の人(受益者)のために管理、処分することです。
つまり、自己信託は、委託者=受託者の一人で信託できてしまいます。
自己信託での追加信託
法律では、自己信託を行う際は、公正証書や電磁的記録などの一定の書式によって行わなければなりません。
自己信託に追加信託する場合には、その追加信託が「単なる信託財産の増加」なのか、「信託の変更」なのか、「新規信託設定+信託の併合」なのか、を慎重に判断する必要があります。
もし、新規信託設定+信託の併合である場合には、公正証書や電磁的記録などの一定の書式によらなければならないからです。
まとめ
今回の解説をまとめると次の3点です。
- 信託できる財産は、積極財産で移転または分離可能なもの
- 預金、年金、農地は信託できない
- 追加信託するときは、信託契約内容次第では、信託の変更や新規での信託契約が必要になるので注意が必要
信託契約はとても複雑なものです。家族信託を検討されている場合には、一度専門家へご相談することをおすすめします。